未来とつながろう KAKEHASHI

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油井啓祐

株式会社キュービック代表取締役

株式会社キュービック代表取締役。
1995年 株式会社ジャフコ入社。国内ベンチャー企業への投資業務に
従事。
1999年 父の逝去に伴い、株式会社キュービック代表取締役に就任。
2004年 キュービックが保有する「カプセルイン秋葉原」の
事業再生を本格化。
2006年 新事業の構想に着手。
2007年 柴田文江氏にビジネスモデルとデザインに関する
ディレクションを依頼。
2008年 「カプセルイン秋葉原」は開業20年目にして過去最高益・
最高人泊数を達成。
2009年 「カプセルイン秋葉原」は周辺の再開発に伴う立ち退きにて
閉館。
2009年 「カプセルイン秋葉原」の再生ノウハウを活かして全国の
カプセルホテルの再生支援事業に着手。
2009年 新事業として「ナインアワーズ」の1号店を京都に開業。

2009

01.29

全く新しい形のカプセルホテルが京都に誕生!「nine hours」

こんにちは、「KAKEHASHI」番外編インタビュー第2段です!

ご紹介するのは、このほど京都・四条河原町に誕生した、全く新しいタイプのカプセルホテル「nine hours」。
今回はボリューム満点なので前編後編に分けてお送りします。
前編の今回はホテルのプロデューサーである、株式会社キュービック代表取締役の油井啓祐さんに、お話をお聞きします!

睡眠以外なにもない「スリーピング・ハブ」。

──「nine hours」のコンセプトなどをお教えてください。

「眠たい人が何も考えずによく眠って、朝には気持ちよく出発する」ですね。
シャワー・お風呂に1h、睡眠7h、そして身支度に1h。この9時間を利用者に設定してもらい時間を効率よく使ってもらうのが狙いです。また、うちはカプセルホテルではなく、「スリーピング・ハブ」と言ってます。
気軽に、かつ合理的に持ち歩いてもらえる快眠宿泊方法を提供しています。
チェックアウト時間を予約時に利用者が設定。ちなみにこの設定を変更することは出来ません。他の利用者に迷惑がかかりますからね。「次の人が待っているかも」という考えを常に持って欲しいんです。

──ホテル内はどういった内容になっていますか?

まずエントランスでスリッパに履き替えてもらいます。
2~5階が女性、6~9階が男性フロアでエレベーターが男女別になっていますので、受付に来られたら各シャワーフロアに案内し強制的に身奇麗になってもらいます。トイレは各フロア2つ。

シャワー室のロッカーには就寝用の吸汗性・速乾性に優れたウェアを置いています。サイズが合わなければ、棚から出してもらえれば。
その後、ご自分の部屋に移動してもらいます。

ここまで全て、こちらで流れを作ってしまいます。
暗いフロア内でも、自分の部屋番号のサインが明示してあり「ここだよ」って主張してくれるので、利用者は眠いまま何にも考えず寝床にたどり着けるようになっています。

──ラウンジに自販機が見当たらない・・・と言うかチェア以外何もありませんね。

そうですね。自販機は置いてませんが、無料のミネラルウォーターをチェックイン時に手渡ししています。あと飲食の持込みは自由です。ただしラウンジのみですが。

まず利用者が一人で来ることを前提にしているので、何もなくて良いんじゃないかと。イメージは駅の待合室みたいな感じですね。LAN環境もここでだけ。

部屋では寝るしかない状況をこちらで作ってます。

──個室で飲食される利用者の方、いないとは限りませんよね?汚れなどは・・・。

最初、お客さんに対して「飲食はダメだ」って言おうとしたんですよ。
そしたら周りから「そんなことはしてはいけない」っていわれて(笑) 飲食はラウンジのみでお願いしますって書いたんです。気持ちの上では個室で見つけたら注意したいと思ってますけど。
なんでもマナーって大事なんですよね。で、お客さんのマナーを信じようと思いまして。秋葉原で思ったんですが、外国の方に関しては日本人よりマナー水準が高いんですよ。ルールが明確に存在しているとね。
それに、ほかのカプセルホテルを利用してる方はたぶん来られないので、実際マナー面で気にする事は、特にありませんね。

快眠への機能性を徹底的に追求するアメニティとデザイン

──事業を開始するにあたり、特にこだわった点は何でしょうか?

アメニティは相当こだわって作り上げました。
これは、うちの完全オリジナルアメニティになっています。
「玉の肌石鹸株式会社」さんに特別に作ってもらったんですよ。
開発に2年かかっちゃいました。都内にあるホテルのアメニティを全部取り寄せて、スタッフで話し合いを繰り返しました。お釈迦様が生まれた所にあった菩提樹(ボダイジュ)の香りで、ユニセックスで使えるものです。タオルやシーツにも結構こだわってますよ。
シャワールームには浴槽もありますし、お湯も常時溜めてます。ちょっと狭いですけど、常に清潔感を感じさせる造りにしてあります。
あとはやはりデザイン面です。個室は一般的なカプセルホテルと同じくらいの大きさなんですが、実際見てみると思いのほか広く感じられると思います。これがデザインの力ですね。
(左画上:こだわりのアメニティ類、下:清潔感溢れる浴槽)

そしてなにより快眠性です。まず枕元の照明にはLEDを使用しています。
これがだんだんと暗くなり真っ暗になります。起床時間の30分ほど前からまた徐々に明るくなって、顔を照らし始めます。ちょうど朝日に照らされている感じですね。それで目が覚めるんです。
寝るとか目が覚めるって事は脳の作用なんですが、唯一学術的に確立されているのが光による作用なんですよ。他にも音とか映像の刺激でも生体反応はありますが、光のみ知見データがちゃんと取れていて。
最初にこの事業を考えた時に、世界中で眠りの研究が一番進んでいるのはどこだろうって調べたら、民間ではパナソニック電工さんがデータを沢山持っていらっしゃったのでお願いしました。
マットは東洋紡さんのもので、新幹線にも使われている素材で、保温性が高くて反発力が非常に強いものを使っています。
(左画:淡く温かなな光に照らされたカプセル内)

ふつう、快眠にはテンピュールみたいな低反発が良いと思われがちなんですが、湿気がすごくて寝返りを打ちにくいんですよね。だから実の所、眠りにとっては良くないんです。あと枕にも4種類の素材を使って、寝返りをどれだけ打っても頭の下に枕がちゃんとある状態を維持できるバナナ型枕にしています。

値段ではなく、シーン合った「使い分け」を

──なぜ今、カプセルホテルなのでしょう?

元々、出張などで自分がビジネスホテルを使う事が多く、「夜~朝の時間の使い方、合ってるのか?」って疑問に思う事があったんです。
それと秋葉原の店舗を見ていて、外国人利用者も多いし、これはグローバルビジネスになるんじゃないかって思ったのがきっかけですね。
そもそも海外にはカプセルホテルってもの自体がないので、彼らには日本人みたいに汚いとか不便とかって言うネガティブなイメージがないんですよ。

京都の東山にある古いカプセルホテルの再生事業もやっていて、3年ほど近くのビジネスホテルの価格を調べたりもしていましたし、ニッポン発のサービスとして海外に輸出する上で京都から始めるのが一番良いと思って京都でやり始めました。

──やはり男性利用者がターゲットなのですか?

「nine hours」に泊まろう!と言う自分の考えで動けるクレバーなお客を狙っているので、酔っ払いを囲い込むことはまずしないですね。 飲んじゃったから泊まろうとかではなく、出張なんかで今日は時間があるからラグジュアリーホテルや老舗旅館に泊まって、明日は効率よく行動したいから「nine hours」に泊まるって使い分けしてもらいたいんです。女性ってエルメスのバッグを持ってるけど、ユニクロも着るよって感じの使い分けが上手いじゃないですか。男性はそれが出来ないんですよね。それをしてもらいたいし、出来る人が良いんです。

──社長の御考え、コンセプトは理解できても値段がちょっと高いかなと感じます。

ビジネスホテルって目つぶって入ったらどこか分からないですよね。どこもユニットバスはせせこましいし、要らないもの・・・冷蔵庫とかテレビも含めての宿泊費かぁって思うし。
それにまず部屋って概念があって、そのコンセプトに乗っかった上で狭いか広いかどうかを比べてるだけですしね。
僕らは空間じゃなくて、機能を欲しがってるんです。
光で起こす機能とか、アメニティの開発に時間がかかったのも品質・機能性のリッチさを重視したからです。
(左画:快眠に特化した客室フロア)

ここでは寝ることしか出来ません。でも眠るための機能は全部揃っています。
「nine hours」って名前を売り出すのではなく、スリーピング・ハブと言うコンセプトを売り出したい。新しいもの好きで最初はもちろんOK。その後で使い分けをして欲しいんです。4900円が安いか否かではなく、ここには独特の「nine hours」体験があってそれが4900円なんですよってコンセプトを押していきたい。

──では今後の方向性、また課題はなんでしょうか?

3店舗目以降は検討中です。とりあえずWEBサイトを作り変える予定です。使い勝手が悪いのもあるけど、デザイン面が大きく利用者に自分が使うリアリティを提供出来てないので。「夜、眠い目を擦りながらうちにスリーピング・ハブ体験をしに来た人が、言われた通りにやったら朝気持ちよく出て行ける」って体験を、自分のものに思えるものが必要だなと考えています。
例えばコーヒー業界でもドトールが出てきて、気付けば銀座にスターバックスが出来てる。そういった次々に新しい事業形態が出てくる中で勝ち残っていく。同じ事がホテル業界でも起きています。僕は柴田さん達にこれだけのものを作って頂いたので、5年10年先に“都市の中で合理的に滞在する”事が万国共通の新しい滞在の仕方に普通になった時、「nine hours」が主流になっているようにしたい。
京都認知が低い点は課題ですね。観光と出張での利用が多いかなといった所ですが、デザイン関係者が多いので、一般のお客さんは何を見て来てくださるのかって所を押さえないと。
値段についても、それがもし絶対的に高いならどれくらいが妥当なのか、を考えてなくてはと思っています。

──ありがとうございました

どこまでも真っ白な壁に、可愛らしいアイコン。例えば靴箱なら靴のマーク、可燃物・不燃物にペットボトル。全てが言葉でなく、図柄で構成させていて、言語を特定せず外国人でも分かりやすく使いやすそうだなと感じました。とにかく思い描くカプセルホテルのイメージとはかけ離れた造りでビックリ!!すごくキレイでオシャレなんです!よく眠れそうだし、駅からもすごく近いので使ってみたいなと思っちゃいました。

次回、後編には2009年3月13日のインタビューでもお会いした柴田文江さんに「nine hours」のデザイン面についてお話をお聞きします。お楽しみに!

取材@nine hours

このクリエイターへのお問い合わせは

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【address】東京都台東区花川戸2-7-3
【Tel】03-3843-1786
【Email】yui@9hours.jp

ナインアワーズ京都寺町
【Tel】075-353-9005
【Email】contact@9hours.jp
【HP】http://9hours.jp

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