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CREATOR

西條鉄太郎

METACRAFT代表

METACRAFT代表。1986年5月4日生まれ、A型、牡牛座、寅年。中学は生徒会長、高校は不登校。普通自動車免許あり。英検準二級。好きな食べ物はエビ料理と辛いもの全般。趣味は作詞作曲、熱帯魚、写真撮影。

2019

07.02

気鋭のデジタルアート&ヴィジュアルを生み出し続ける新時代クリエイティブチーム「METACRAFT」代表

「KAKEHASHI」第30回のインタビューは、METACRAFT代表の西條鉄太郎さんです。

adidas、LUIS VUITTON、ZARAをはじめ、名だたる有名ブランドのイベントでロボットアームやCG合成を利用した"バズる"デジタルアートを制作するほか、ストリートカルチャーとオリジナルの水着グラビアを発信するメディア作品『SILLY』を立ち上げるなど、先鋭的なクリエイティブを世の中に提示し続けているMETACRAFT(合同会社メタクラフト)。

空間デザイナー、プログラマー、ビジュアルディレクターなど、異なるジャンルのクリエイターがセッションのようにものづくりをする、一見バンドのようにも見える彼らの実態に迫りたいと思います。

ライター、ブロガーとしてメディアアートやカルチャー情報を発信していた学生時代

まずは、METACRAFTがどういう経緯で立ち上がったのか、西條さんのヒストリーを通して教えてください。

僕は学生の頃、GIZMODOというガジェットメディアの記者をやっていました。その頃はSNSでどうやったら記事がバズるのかを自分なりに研究していましたね。

毎日たくさんの記事を公開しその反応を見ることで、時間帯毎のバズる記事の傾向や、読まれる記事タイトルのつけ方などについて精度を高めていくことが密かな趣味でした。

特に学生時代はメディアアートが好きで、日本国内ではまだ注目されていないアーティストや作品の情報を、より早く、より多くの方達へ伝えることに楽しみを感じていました。

GIZMODOでの経験を通し、文章を書く面白さ、そして書いた記事が世の中に与える影響力の大きさに気づいたことで、関わるメディアの数や種類を積極的に増やして行くことに決めました。WIRED本誌やTHE DAYをはじめ、WEBだけではなく雑誌への寄稿も増えていきました。また、寄稿内容もテクノロジーにまつわる話題からストリートカルチャーについてまで、幅広く取り扱うようになりました。

ですがもともと僕自身も、ものづくりによる表現活動を主たる仕事にしたかったので、ライターとして誰かの作品を紹介するだけでは物足りなくなりました。

そこで大学院を卒業後も就職はせず、ライターを続ける一方、できることは何でもやろうと、デジタルアート、WEB、ロボットのプログラミングなど、様々な仕事を通じてお金を貯め、合同会社メタクラフトとして法人登記しました。その際、自分一人でできるものづくりの限界に気づき、引きこもり状態だった友人を自分の家の近くへ半ば強引に引っ越してこさせ、プログラマーとして雇い始めました。その頃から理化学研究所などビッグネームから仕事の依頼を頂けるようになりました。

その後、仕事の拠点をレインボー倉庫というシェアガレージへ移し、様々な偶然の出会いや運命的な御縁から徐々に現在のメンバー、クライアント、自分たちのワークライフスタイルが形成されていきました。

西條鉄太郎

仲間達との運命的な出会い

異なる分野のメンバーは自然と集まったんですか?

ある程度メンバーとして迎え入れたい人柄や職種のイメージを持って普段過ごしているだけで、今まで求人サイトなどで積極的な募集をかけたことはありません。似たもの同士、気の合うやつらがたまたま出会って惹かれ合いました。

飲み屋で知り合ったエキセントリックな人に「今すぐ会社やめて明日から俺と仕事しよう」と声かけたり、気に入った若者にピザやコーラを与えつづけ餌付けで洗脳したり、ネットで見つけた面白い人に声をかけたりそいつが連れてきた手下がいつのまにかうちに居着いていたりしました。

日本に旅行で訪れていたブラジル人を直感でメンバーに誘ったこともあります。初対面の時は、本当に偶然、たった1時間の出会いだったんですが、その後僕らはSkypeでコミュニケーションをとりながら、半年かけ就労ビザを発行し家族ごと日本に呼び寄せました。僕はロマンチストなんですよ。

METACRAFTならではの作家性、自分たちだけのスタイルが大切

異なる分野のクリエイターが集まっているMETACRAFTさんですが、一番大切にしていることはなんですか?

アウトプットされたものがきちんとMETACRAFTというグループのフィルターを通して生まれたものだとわかるものづくりがしたいです。

メンバー各人専門が異なるので、仕事によっては担当者一人で完結できるものもあるのですが、そういう時でも”自分”ではなく”自分たち”なら何を作るべきかを常に考えてアウトプットしています。それは普段の何気ない笑い話や、漫画やゲームの勧め合い、一緒に釣りや音楽フェスへ行ったりだとか、そういったコミュニケーションを通じて互いの内面に影響を与えあう関係性であるから可能になります。

自分たちはクライアントワークの世界に生きているため、当然ですがクライアントが喜んでくれるものを作る必要があり、そうでありたいと努力しています。そういう意味ではやはりアート業界に比べると自由なモノづくりのできる現場は少なく、制限も多いです。それでも例えば有名建築家は、様々な社会的制限や物理的制約があったとしても「その人らしさ」というものが存在しますよね。僕らもそういった意味での作家性を大事にしていきたいと思っています。

なぜ作家性を大事にしていきたいのでしょうか?

最適解を求めがちな現代において、むしろ最適解から外れたカッティングエッジを提供していけるクリエイターでなければ価値は無く、カッティングエッジはあくまで作者の主観です。それが作家性です。価値のないクリエイターを雇うなら、人工知能に最大公約数が喜ぶ絵でも描かせたほうマシです。ちなみにそれって人工知能の作家性なんで、人工知能はクリエイターとして有能なんですよ。人工知能と同じように最適解なことをやろうとするクリエイターに価値がないということです。機械に叶うわけないでしょ。

例えば僕が以前立ち上げたWEBメディア『SILLY』は、最適化されている既存メディアへのカウンター作品です。全国のコンビニで売っている週刊誌のグラビアって全部同じじゃないですか、これはマーケティング的に最適化されたまま過去から進化していない”プロカメラマン”と”プロ編集者”の結果だと思うんですが、もういい加減見てて飽きませんか? 写真なんてシャッター切れば撮れるわけですから、素人の僕でも撮れるし、逆に僕は素人なんで同じような写真しか撮れない(笑) でもそれを続けることで、ひとつのスタイル、他のメディアにはなかったアイデンティティになる。

記事も同じで、僕自身WEBライターの時の経験からある程度バズるテキストの書き方やSNSで読者の目に留まりやすい投稿パターンを直感的に把握しています。でもパターン化できることなら人工知能にやらせたほうがより効率化出来るでしょう。でも僕らはあくまでも他のメディアと一線を画すブランディングがしたかったので、SILLYの記事は取材記事がメインである上に、記者の主観でエモーショナルに、ポエミーに、私小説のように書く努力をしていました。

SILLYhttps://silly.amebahypes.com/

“edge of chaos”を生み出すのはバンドスタイル

西條さんの言う”バンドスタイル”とはどういったものですか?それを形づくっていくうえで重要なことは何ですか?

“edge of chaos”というのは複雑系や人工生命を語る際に出てくる言葉で、意味は「進化が最も起こる領域は、秩序とカオスの境界にある」です。僕らは既存の大勢を打ち崩すクリエイティブを生み出すため、あえて自らを映像制作屋だとかシステム制作屋だとか、何か特定の専門家集団として規定せず、つくれるものはなんでもつくるクリエイターチームです。だから僕らの日常はランダムでカオティックですが、クライアントワークという秩序との均衡から今までに無い、進化したクリエイティブが生まれています。

バンドのフリーセッションって、音楽的秩序と、カオティックな個性のぶつかり合いや混じり合いから奇跡的に気持ちの良いグルーヴが生まれたりしますよね。あれに似てます。でもこれは誰とでもできる事ではないと思います。

METACRAFTは、メンバーが大事にしているものが心根の部分で同じだったり、共通な趣味をもっていたり、私生活の中でも影響しあっていたり、そんなメンバーが集まっているので、フリーセッションしても破綻しないのです。それが僕の言う”バンドスタイル”です。

プライベートでも一緒に集まったりするんですか?

僕らはプライベートでも仲が良くて、家族ぐるみでつきあっています。メンバーの子どもの運動会に参加したり、しょっちゅうみんなで飲んだり遊びに行きますよ。

カッティングエッジな作品の裏にはメンバー同士の深い信頼関係があったんですね。

本日はありがとうございました。

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