CREATOR
柴田文江
Design Studio S代表
2010
02.12
新しい宿泊のコンセプトを、デザインで具現化すること
「KAKEHASHI」番外編インタビュー第2段の後半、今回は「nine hours」のデザインを担当されたインダストリアルデザイナーの柴田文江さんにお話をお聞きします!
柴田さんはホテルのデザイン面に限らず、コンセプトからアメニティの素材選びまで全ての面に関わっていらっしゃいます。
今回もまたとってもエネルギッシュに、油井社長とはまた違った視点で、カプセルホテルに対するイメージや「nine hours」が完成するまでについてお話し頂きました。
今回のプロジェクトでは、私視点にこだわったんです。油井社長をはじめ、今回プロジェクトのメンバーはカプセルホテルのプロの皆さまがたでした。もちろんそれはいい事なのですが、一方でどうしてもカプセルホテル視点から抜け出さないというデメリットがあると感じたんです。「これなら泊まれるよ」とか、「ここで差別化ができている」という比較対象が、どうしても競合のカプセルホテルになってしまう・・。
まず、それを変えようと思いました。カプセルホテルなんだけども今までとは違うコンセプトを作り、いままでカプセルホテルを使おうと思わなかった人々が選択できるような宿泊施設を作りたい。そのアウトプットが「nine hours」でした。
正直、ムリかもと思った時もありました。カプセルホテルという枠組みを、デザインでどこまでかえることができるんだろうと・・・。取り組むからには、本当に価値観を変える、つまり、例えば私みたいに「カプセルホテルには絶対に泊まらない」という人をふりむかせなければならないので、相当難しいなと(笑)
考えていく中で、機能ってことに特化すればあり得るんじゃないかなと思ったんです。
ユニクロでブラウスは買わないけどヒートテックなら買うよって感じで・・。消費者は賢く使い分けをするので、「安いからカプセルホテル」という考えの延長ではなく、「賢く考えたら、カプセルホテルになった」という形があるんじゃないかと考えました。その際も、ターゲットは自分。例えば、リサーチしてみて、サウナとか映画が見られるラグジュアリー系のホテルって田舎にあるんですけど、いくらそんな事をしても自分の選択肢には入らないし、そういうことではないなと考えてやめたんです。でも例えば、特化した領域が「眠り」だとすると、自分の選択肢としてこれはあると。
例えば、“狭い”ことはデザインではどうにもならないんです。広く見えることはあるけど・・。狭いという前提にたって、その中で消費者に提供できるものが何かという事を考えたい。カプセルホテルだから選んだ段階で“狭い”事はわかっている。でも、“汚い”はどうやっても我慢できない。デザインで作れる豊かさはスペースじゃなく、違う何か、アメニティも含めた複合的な視点での豊かさだと思うんです。賢く選んでいただく事を志向したのですから、まずはその方向性に合う全体設計が必要でした。
デザインのために、私自身もいろんなカプセルホテルに泊まりましたよ。これは、かなりの苦労でした(笑)
ターゲットに関しては、よく性年齢や職業で絞り込みますよね。でも「nine hours」のターゲットは、そういう切り方じゃなく、「新しいものを自分の価値で選択できる人」という設定にしたいんです。昔、化粧品って年齢で切られていたんですけど、今は違うでしょ?自分の肌に合うかどうかとか、好みで選ぶのであって、価値観にあわせたターゲッティングが行われています。それと同じですね。
何を優先するかの判断だと思います。
「スターバックスをコンビニで売るようなものだから、不適切だ」という考え方がある一方で、まずは消費者の方に体験していただかないと広がらないという危惧もあります。たしかに「nine hours」は新しいコンセプトですが、特別な人だけに受け入れられるものを目指したのではありません。ポピュラーという言葉が良いと思うのですが、普通の消費者の間で「いいらしいよ」と話題にしてほしいという思いが強くあります。そのためには、まずはコンセプトを正しく知っていただくという壁を乗り越えなくてはなりません。
その壁を越えたら、次はそれを自分の暮らしの中に取り入れてくれるかどうかです。自分の賢い選択肢の一つとして「nine hours」が選ばれる形になっているかどうかがカギになると思います。京都に行ったら「nine hours」があるし、泊まる所があるから大丈夫って風に。
私自身もカプセルホテルには汚くて不安…おじさんが使う場所ってイメージを持っていて、利用した事がありません。だけど「nine hours」を見て、絶対ムリ!って気持ちはなくて、チャレンジしてみようかなと思えました。なにより、こだわりのアメニティを使ってみたい!
恥ずかしいと思うより、むしろオシャレな所を知っていると自慢できそうです!!
みなさんもぜひ体験してみてください。
デザインスタジオ エス
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