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クワクボリョウタ

幅広くアート活動を行う電子デバイスアーティスト

1971年生まれ。1998年から主にエレクトロニクスを用いたデバイス作品の制作を開始する。ガジェットの体裁をとって遊べる作品を心がけつつ、デジタルとアナログ、人間と機械、情報の送り手と受け手など、さまざまな境界線上で生じる現象をクローズアップする。作品制作の他、メーカーとの共同開発なども手がける。筑波大学大学院修士課程デザイン研究科修了/国際情報科学アカデミー[IAMAS]アート・アンド・ラボ科卒業。

2009

02.27

幅広くアート活動を行う電子デバイスアーティスト

「KAKEHASHI」第8回目のインタビューは、電子デバイス作品の制作を中心に様々な活動を行うアーティスト、クワクボリョウタさん。
お時間を頂いた日は、ご家族で展覧会を見に来られていたところだったそうで・・・お忙しい中ありがたく取材させていただきました!

クワクボさんは、電子デバイス作品の制作活動等を行っているメディアアーティスト。企業とのコラボレーションで作品を制作したり、様々な場所での展示を行うほか、ワークショップの企画・講師なども色々なところでされています。

待ち合わせ場所に現れたクワクボさんは、ものすごく丁寧で人の好さそうな親しみやすい方。写真やウェブからだともっとクールで怖~い感じのお兄さんをイメージしていたんですが、全然想像と違いました!(笑)息子さんがハイハイができるようになったのでメディアアートの展覧会に連れてきたとのこと。ちょっとした英才教育ですね(笑)そんなお父さん、ちょっとうらやましいです。

やさしいお父さんの一面も持つクワクボさんに、アート活動に対する思いを語っていただきました。

時代の流れに負けないものを作りたい

クワクボさんは電子デバイスを使った作品を中心に作られていますが、数あるジャンルの中から電子デバイスを選ばれたのはどうしてなんですか?

僕は、まず作品に対してしっかりとキャラを立たせたいと思っているんです。例えば、今回は「カワイイ」を表現する作品を作ろうとか。そういうキャラのイメージは、作品を作るときの最初の種になるんですが、電子デバイスを使ったものって、すごくキャラ立ちさせやすいんですよ。自立性を感じさせやすいというか。扱いが楽だし、一番簡単に情報を動かせるものだと思います。一番簡単に、難しく感じさせられるものを作れるっていうか(笑)。

なるほど。キャラのイメージっていうのは、見た目でっていうことですか?

うーん、僕の考え方では、ハードとソフト、外見と中身は別物じゃないんですよね。中身=外見というか。そのもの全部一体で「こういうものがあったらいいな」というのが最初にあって、それを想定してどういう技術がいるかとかを考えて作っていくんですよ。アーティストって、「何かやりたい」みたいなのがあって作るものだと僕は思ってます。最近は時代の流れでそうじゃなくなってきた感じもするけど。

と、いうと・・・?時代の流れで、取り組み方がかわってきたということですか? 

最近、アーティスト向けのキットなんかが多く出回ってるじゃないですか?そういう技術やモノがあって、それを使って何かやりたい・自分のできることでやろう、という創作の方向に変わってきているんじゃないかなと思うんです。そういうのがブームになって世間でも盛り上がっているし。ネット社会になって、情報共有の手段も増えましたしね。誰でもできる幅が広くなってきたように感じます。僕が最初に作品を作ったときなんかはメディアがないのが普通で、英語の本一冊であとはなんとか頑張って作る!ていう感じでやっていたけど、いまやネットで検索すれば何でも出てきますからね(笑)

確かに、そうかもしれないです。情報社会はいろんなものを変化させていきますよね。

すごい影響だと思います。最近のモノづくりサイトって、ラフでハック・・・というか、その場のありあわせでうまく作るアメリカ的な精神が強いように感じるんですよね。作品の完成度とかではなく、その時作っているときをどう楽しむか、みたいな。それもあるし、素人でもスゴイ作品をネットに上げてる人なんかも多くて。そういう中で、プロって何なのかというのをすごく考えさせられますね。

クワクボさんはこういう時代の中でのアーティストとはどういうものだと考えていらっしゃいますか?

そういう流れに相反するというよりは、違うことをやるなら何をするのか?ということを考えてますね。僕のこれからの課題だと思ってます。ひとつ頭にあるのは、マトリューシカみたいなものを作りたいなということなんですよね。あれって、何年たってもカワイイし面白いじゃないですか?メディアアートって未来を見ていくものだから、その時新鮮だったり面白かったりするものも、時代がたつと世間に広がっていって普通になってしまうんですよね。そうじゃなくて、もっと普遍的な、時代の流れのないものを作りたいなと思っています。10年、20年先でも「これ面白いな」って思えるような。

人と人をつなぐメカを

今後の活動として具体的な予定は今ありますか?

日本科学未来館で5月に個展を開く予定です。関連して子どもを対象にワークショップなんかも企画する予定です。電子回路という技術的なものをつかって、技術的なこと以外の楽しみを体験できるようなものにしようと思っています。プログラミングをやらせると大変なので、プログラミングに近いことを2~3時間のワークショップの中でできるように考えています。展示も、展示を全部見終わると、裏にその展示の中身を全部見れるような部屋があって、仕掛けを見れるようなものにしようかなと思ってるんですよ。ワークショップをやって、それを組み替えたりするのも面白いなと思ってて。

面白そうですね!で、ずばり、今回の展示のテーマは何ですか?

今回の展示は「感情移入」をテーマにしたいと思ってるんですよ。合理的な判断を邪魔する感情的な判断ってあるじゃないですか?でも、そういう感情的な判断が有利に働いている場面って結構あると思うんです。そんな視点で、感情を刺激するようなメカを作りたいなと思ってます。たぶん、日本のロボットを作る人って、感情移入と制作のバランスがいいと思うんです。逆にアメリカのロボットとかってホントこわいんですよ、ゾッとするような(笑)ロボットみたいな高度な技術を使って何かするっていうよりは、もうちょっと簡単な技術で感情のスイッチを押せますよ、というようなものを作りたいと思ってます。

感情のスイッチを押す、というのは・・・?

機械って、人間が楽するために作られてるものじゃないですか。家電でもそうだし。最近子供ができて思うんですけど、子供がうるさい時って、テレビとか見せとくと結構楽だったりするじゃないですか。でもそれって、人と人のつながりを遮断するんですよね。そういう機械の在り方っていうのは面白くないなって思ってて。ロボットとかも、人を世話するものじゃなくて、人が世話をする、手を煩わせるものだったらいいなと思うんですよ。それも、複数の人が関わらないといけないような。

機械が人の輪を広げるっていうことですか?

そう。人と人のつながりを広げる仲介役みたいなものだったらいいのになって。現実的には高齢化社会だし、世話するためのロボットや対話するためのロボットが必要になってくると思うんですけど、僕がいいなと思うのは、お年寄りがいたらその人の家に誰かが行かないといけなくなるようなロボットなんですよ。人を動かす、それで社会が変わるような機械がいいなって。僕はロボット技術者じゃないからもちろんそんなロボットを作ることはできないですけど、作品としてそれを示すことはできるんじゃないかなと思っているんです。機械によって人が集って、集ったみんなの力で新しい何かがうまれるような形を目指したいです。そのためのフックとして、機械への「感情移入」があるんです。

なるほど!確かに、それこそ人間と機械のあたらしいかかわり方といった感じがしますよね。ありがとうございました。

そんなロボットが実際に社会に出るようになったら、生活を便利にする機械があふれるよりも、温かい社会ができるのかもしれないですね。文明が進むにつれ、生活は便利になるけれども、温かい人と人との繋がりなんかが失われていっていますもんね。クワクボさんの、そんな温もりのあふれる展示がどんなものになるのかすごく楽しみです!

このクリエイターへのお問い合わせは

【Email】ryota@vector-scan.com
【HP】http://ryotakuwakubo.com/

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