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2012
08.06

【林勇気】デジタルの世界の「手ざわり」を表現する映像作家

Author:運営事務局

Tags: 林勇気

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「KAKEHASHI」今回のインタビューは、映像作家で、宝塚大学造形芸術学部准教授でもある林勇気さんです。林さんの作品は、自身で撮影した膨大な量の写真を、コンピュータに取り込み、切り抜き、重ね合わせた独自のアニメーション。一見CGの映像作品にも見えるのですが、実は全てこの世界にある何かの写真からできていて、非常に緻密な作業でつくりあげられています。そんな新鮮な作品を見せていただきながら、お話を伺っていきました。


   Yuki Hayashi selected video works 2011-2008




パソコン上の「手作業」でつくりあげる作品


――
まず、映像制作の過程をお聞かせください。
僕は日頃から身近なものをデジタル撮影し、その写真をストックしています。その対象は空や雲、木々といった自然から、ブロックの壁やありふれた日用品など様々です。その数は膨大なものになりますが、パソコンのハードディスクにアーカイブしておき、作品やテーマごとに適当な写真を選び、切り抜き、重ね合わせることでアニメーションを制作しています。時には、インターネットの検索エンジンで特定のキーワードを入れて出てきた写真データを用いることもあります。
 

 ――切り抜く、重ね合わせるといった作業は、すべて手作業なんですか?
はい。自分なりにその時その時のテーマやルールを決めて、ひとつひとつ写真をピックアップしていく。その写真画像をパソコン上でひとつひとつ、切り抜いて、それをまたこつこつと構成したり、動きを加えていく。すべてがパソコン上ではありますが、「手作業」なんです。この作業の過程自体を可視化した『the outline of everything』という作品もつくりました。手の動きが画面上で線として表現されています。


the outline of everything : picnic in Takarazuka Garden Field2010


「もうひとつの世界」の"手ざわり"を表現する

――
制作過程をお伺いしていると、膨大な作業量が想像されますが。
そのとおりです。数分間の作品でも、数か月かかります。
でも、この制作の過程も私の作品の大切な要素だと思っています。
 
――制作過程も、作品のコンセプトを表現しているということでしょうか。
はい。僕は作品で画面の向こうにある「もうひとつの世界」を描きたいと思っています。画面の向こうのデジタルな世界は無機質で温度のないものに思われがちですが、そういうモノにも、自分とのつながりや"手ざわり"は感じる。現実の延長にも感じたりします。この感覚を表現するために、「つくりもの」だけでつくりあげるのではなく、実際にこの世にあるもの、この世に確かにあった瞬間を切り取った写真を、自分の手作業で積み重ねていく、という制作工程にこだわっています。コンセプトがそうなので、写真データはほとんど加工をくわえません。そうやって実際の写真を用いて緻密につくりあげることで、現実とつながった「もうひとつの世界」が見えてくるのではないかと考えているんです。
 
――画面の向こうの世界の"手ざわり"というのは、どういうことなのでしょうか。
マウスやコントローラー、タッチパネルを通して、実際にモニターの中の世界に「触れている」という感覚がある。画面の向こうの世界にも、ある種のリアリティを感じる…といったことでしょうか。テレビの中の映像は流れていくだけだけれど、例えばテレビゲームであったり、パソコンの中の世界だと自分で動かせる。そういう画面の奥の世界であっても、自分で触れる、動かせるという感覚は、現代を生きる人ならではのものだと思うんです。先ほど紹介した『the outline of everything』も、まさにそのような感覚を可視化したものです。


デジタル世代の感覚的なリアリティに迫っていきたい

――
リアリティを追究されてはいますが、何かとつながる「ぬくもり」を前面に押し出したアウトプットではないですよね。一見CGのようにも見えたりもしますし。
はい、画面の向こうの世界との距離感は無視しないようにしています。向こうの世界にリアリティは感じるけど、完全なる現実ではない。それを、俯瞰した視点で表現しています。それは、インターネットに接する時の距離感や、テレビゲームの映像がプレーヤーが俯瞰して見る構造になっているのと似た感じかもしれません。


garden2008

――確かに林さんの作品にはテレビゲームの中の世界のように見えるものも多くありますね。例えば、『garden』という作品のような…。そういった、テレビゲームやインターネットの世界が身近にあるというのは、本当に今の時代のリアリティですよね。
そうですね。僕が子どもの頃に「ファミコン」が登場しました。それから、携帯電話、パソコン、インターネット、スマートフォンと次々に新しいデジタル機器が生まれ、それらは 現実の世界で欠かせないものになりました。そこで生じる現実とデジタルの関係に対する感覚は、僕の世代やそれより若い世代にある程度共通しているものではないかなと。デジタルの画面の向こうの世界が実際の現実と何らかの形でつながっているという感覚ですね。

――映画『サマーウォーズ』で描かれている世界と通じるものを感じます!
そう言っていただいたこともあります。あの映画で描かれている世界を完全なフィクションに感じないのが僕らの世代だと思います。なんとなく、感覚として理解できるというか。


――逆に、共感しづらい世代もいるのではないでしょうか。
そうですね。僕らより上の世代のでは、作品によっては理解はできても、感覚として共感できない方も多いかもしれません。でも面白がってもらえたり、興味を持ってもらえたりすることもあって、そういう鑑賞者の方の率直な反応はとても面白いです。
 

いまと、これからのこと

――
そんな中、最近では、一般の方から応募したデジタル写真を使用して、『あること being/something"』という作品をつくられましたね。
今までは登場する人間は、僕自身だけでした。それも、「僕個人」として出しているというよりも「人」という抽象的な存在として登場させていたので、今回はひとりひとり違う「人」として出すという、新たな試みができました。この作品では、人と人、人と写真、人と記憶のつながりをより感じられ、今後への可能性を感じました。

《あること being/something》 2011 Photo by OMOTE Nobutada

――
これから新たにしてみたいことはありますか。
その時、その場所、そこにいる人達としかできない作品を移動しながら鑑賞してもらう展覧会などもしてみたいですね。例えば、グループで様々な場所に行って、その場所、場所に対応した映像作品をモバイルのタブレットなどで見て、新たなコミュニケーションを生み出す、だとか…。あと、これは実現しそうなんですが、音楽のライブとともに、プラネタリウムで360度で映像作品を展示する試みをしようとしています。
 
――ライブ感、リアリティをより追求する方向ですね。他にはありますか。
テレビゲームやインターネットと美術のつながりを考察する展覧会、と言いますか、そういう新しい流れの存在と表現を世に発信していきたいです。目的に応じて様々な同世代のアーティストとコラボレーションして、継続的に発信していけたらいいなと思います。
 
――とても楽しみです、期待しております!本日はどうもありがとうございました。
 

CGに見える映像でありながら、よくよく見ると水面が繊細に揺れていたり、木が風にそよいでいたり…。林さんの作品を見ているときに心地よさを感じるのは、つくりものではなく、加工も加えていない、生の画像やリアリティが散りばめられているからかもしれません。デジタルネイティブの世代の共感、それ以外の世代の発見を生む、極めて現代的である林さんの作品。ぜひ、多くのひとに実際に触れるように体感していただきたいです。

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