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2011
08.23

【藤本隆行】メディアアートの未来を照らす、照明アーティスト

Author:運営事務局

Tags: 藤本隆行

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今回のインタビューは照明アーティスト・藤本隆行さん。
伝説のアーティスト集団「ダムタイプ」の一員であり、
日本を代表する「照明アーティスト」の藤本さんは、
さまざまなパフォーマンスやワークショップの
ディレクションを手がけられています。
また、「表現力の高さ」と「エコ」の両方の視点から
今とても注目されているLED照明を、
まだ世の中に広く知られていない頃から、積極的に表現に取り込んだり、
筋肉の動きに反応する「筋電センサー」を使った面白い表現に、
プログラマーやパフォーマーとコラボレーションして、挑戦するなど、
テクノロジーに対しても造詣の深いアーティストです。

今回は、そんな藤本さんに、
伝統芸能とコラボレーションした最新公演「光と照明による能舞台の陰翳」の舞台裏や、
ディレクションするときに心がけていること、そして子供対象のワークショップをすることになった
きっかけなど、たっぷりとお話をうかがうことができました。
取材場所は、京都の町屋を改装した、藤本さんのワークスペース。
その過去と現在が同居する不思議な空間の中で、
藤本さんが自らおいしいエスプレッソを淹れてくださり、
ほっこりしたムードで取材は始まりました。




■ 「能」とLED照明のコラボレーションについて

藤本さんは、「光と照明による能舞台の陰翳」というタイトルで、
伝統芸能の「能」をLED照明で演出するという、興味深い取り組みをされています。
先日、私たちKAKEHASHIの取材陣も、この「LED能」の公演を見せていただきました。
当日はNHKの取材班も来ていて、この新しい挑戦に注目が集まっています。
インタビューは、この「LED能」についての質問から始まりました。


(山本能楽堂で行われたLED照明による「鵜飼」の1シーン)


──LED照明による「能」の演出に挑戦された感触はいかがですか?

毎回、綱渡りです(笑)。これでいいのかな、と思いながら。
能って、インプロビゼージョン(即興)が大事らしいんです。
たとえば笛もその日の気持ちで鳴らすらしく、
シテ方(能を演じる人のこと)が最初に出した声のピッチに
「対抗する」らしいんですよ、「合わす」んじゃなくて。
だから各自で、一人ずつの稽古はしているんですが、
合わすことはしない。ミュージシャンみたいな感じで。
終わってからみんなで飲むとしても、
反省会とかないんです。飲むだけで。(一同笑)
もともと立ち位置などは決まっているので、
照明のプログラムを組むときは
それを参考にすればいいのですが、
スピードとか声の高さとか動きとかは、毎回違うんです。

──古典芸能について、あらためて発見はありましたか。

 能の面や衣装は、外の光が当たった時のことを計算して、もともと作られているんですよね。
(今回の公演でも、「閻魔王」の派手に輝く赤色と金色の衣装がとても印象的でした。)
あれは、当時の最新テクノロジーだったんだと思います。
 あと、省略の具合がすごい。
文脈がわかる人にしか楽しめないように、できている。
でも、僕が子供の頃は、まだそういう伝統芸能の習い事が盛んで。。
僕の祖母も、謡いをやっていて、夜になると謡い始めるのがすごく怖かった(笑)。

──普段の公演と、今回の能のような伝統芸能と、どう違いますか?

 普段のダムタイプ(藤本さんが所属しているアーティスト集団)や
“true/本当のこと”などの公演では、照明だけではなく、全体のディレクションに関係しています。
そういう意味では、能の照明は、楽は楽なんです。
もうできあがっているから。
ただ、ディレクターがいない。もうとっくの昔に死んじゃってて。
だから、照明ができあがったらシテ方に「どうですか?」って聞くけど、
シテ方も「いいんじゃないですか」って感じで(笑)。
でも、すごいなと思ったのは、すごく暗いシーンを作ったときに、僕自身も心配になって、
「これ大丈夫ですかね?もっと明るくしたほうがいいですかね?」って聞いたんですが、
「あ、もっと暗くしてもいいですよ」って(笑)。

──能の照明では、フラッシュみたいにピカピカ~!って激しいものって・・・
・・・やっちゃだめですよね?


・・・できないですよね。
でも、実はフラッシュよりも、もっと速いものをやっているんですよ。
フラッシュの変化の幅は明暗の間、暗転と点灯の間を0.1秒とかで動いていますが、
LEDは0.02秒くらいの速さで、例えば98%と100%の間をとても細かく動かせるんです。
その変化の幅が細かすぎるので観ている人は、ほとんど知覚できていなくて、
あとでDVDとかで見て、「あ、変わってたよね」って気づくという感じで。
それは面白いですね。
 
■照明のプログラミングについて
 
── ところで、今回の能に限らず、藤本さんはご自身で、照明の動きをすべて
「プログラミング」していくということですが、どのようにしてプログラミングされるんですか?

色々なやり方があります。
普通はシーンとシーンの移り変わりが何秒で・・・・と事前に、
綿密にプログラムを組みますよね?
でも、たとえばバイオリニストやダンサーと一緒に公演した“lost2”では、
そういうやり方ではないんです。

(平井優子/ダンサー・辺見康隆/ヴァイオリニストのコラボレーション”lost2”の1シーン)
Max(音響や映像をコントロールするプログラムのこと)を使ってて、
最初に入った音のボリュームで緑色が光って、1.8秒後にその音が返ってきて、
赤色が光る、というプログラムを先に組んでいるんです。
また、ヴァイオリニストが「赤」に指定した周波数帯の音を弾くと、赤が光って、「青」と弾くと、青が光る、
という仕組みを先に作ったりもしました。
ですから、その場では僕はほとんど何もしない、というシーンもあります。
こういうことは、プログラムをまだ組めない頃から、色々と試してきたのですが、
“path”(ギタリストの内橋和久さんやシンガーUAさんと共演したインスタレーションのこと)
の時あたりから、声やギターなどの入力に対して、
リアルタイムに反応するLEDを、全部操れるようになってきました。
まあ演奏したり歌ったりしている人たちは、
そういった仕組みを理解した上で、純粋に楽しんでいましたね。
わざと、こっちの意図に反することをしようとする人もいたり(笑)。
能の時と同じように、インプロビゼーションを大事にしようとしていたので、
それで良いと思います。

■中身はみんなで考える

藤本さんは、照明アーティストとしてだけではなく、
パフォーマンスやワークショップ全体をディレクション(指揮をとること)されています。
そこで次に、たくさんの個性的なアーティストたちと一緒に作り上げていくことの面白さや、
1つの作品へとまとめあげていくためのコツなどをうかがいました。


──真鍋大度さん(youtubeに上げた実験的映像“Electric Stimulus to Face”など、
プログラミング技術を生かした表現活動をしている若手メディアアーティスト)
など、若手の方と一緒にやることも、多いんですよね。

彼は、今の人には珍しく、「アートをやりたい」「何かを作りたい」という気持ちがすごく強い。
最近の若いプログラマーには「何やりましょう?」と待っているだけの人もいます。
面白い技術を持っているのだから、自分で考えてやったらいいのに。
そういう意味では、彼は「自分でやりたい」という気持ちが強いですね。

(筋電センサーを使ったパフォーマンスと照明を主体に構成された"true/本当のこと"の1シーン) 
"true"の中身は、みんなでアイデアを寄せ合って作ったんですよ。
Max使ったりしている人たちのあいだでは、
面白いものができたら、誰が使ってもいいという考え方があって、
思いつくと、どんどん上げちゃって、隠すつもりはない。むしろ発表したがるというか。
僕も、どちらかというと、そういう考え方。
LEDについても、一人でやっていたら珍しい動物みたいやけど(笑)、
もっとたくさんの人がやってくれたら、もっと広がっていくはず。

──“true”もそうですが、藤本さんがディレクションしたものを
「藤本隆行の作品」と言わないのはなぜですか?

僕は、自分は雑誌の編集者みたいなものだと思っています。
中身はみんなで考えていくんだし、全部が全部、自分で作ったわけじゃない。
作るときは「誰でも言える」という状況があったほうがいい。
オープンにしていったほうがいいと思うんです。
自分が全部できるわけじゃないから。
だから自分の作品だとは言えないし、言う必要もない。
「僕がディレクターです」って言わないといけない時は、
誰かが「責任者、出て来いっ!」って怒っているときくらいです(一同笑)。

──個性のあるアーティストたちを取りまとめていくコツってなんですか?
 
たとえば照明を先に作って、みんなに見せて、ここから考えてみてよ、ということはやります。
あとは、できるだけ情報は共有する。唯一できることがあるとしたら。
(共有シートを見せてもらう)
はじめの一、二週間は僕らがプログラムをカチャカチャやっていて
ダンサーが横で準備運動をしているだけ・・・なんてこともありますし。
「どうなってるんですかっ!」って怒る人も出てくるから(笑)。
何をやっているのかを共有することは、大切ですね。

──そういうことをやっていると、一緒にやってみたいという人がたくさんいるのでは?

最近では、井上信太さん(「羊飼いプロジェクト」などを手がけるメディアアーティスト)が
関わられている「新作能」に照明で参加する予定がありますし、
その流れで、今回の能の話にもつながりましたね。

■「自分で考える力」の大切さ

藤本さんは最近「京都コンピュキッズ」という、子ども対象のワークショップを行っています。
そこでは、どんな取り組みをされているのか、詳しくお話をうかがいました。
果たして「コンピュキッズ」とは何なのでしょうか・・・・??


──「京都コンピュキッズ」というワークショップを始めたきっかけを教えてください。

子どもができたからです。
“true”もそうです。
“true”の時は赤ちゃんが成長する途中だったので、人間の知覚の発達に興味がありました。
赤は一番最初にわかる色だとか、人間の顔や男女の区別は早く認識できるようになるとか。
で、子どももだいぶ大きくなってきたので、コンピュータを教えたいなと思って。
たとえば、人の脳はボールが飛んでくるだけでも、色、動き、形について
それぞれ脳の違う部分で感じて、統合するという、とても複雑なことを一瞬でやっているんです。
そういうことを研究しているうちに、プログラミングを教えるのではなく、
「これ(コンピュータのやっていること)は何か」というのを教えたいなと思って。
わりと世の中のコンピュータのワークショップは「ソフトの使い方を教える」
ということが多いけど、
「コンピュータ自体をどう使うか」ということについてはあまり触れていない。
小学校でも、コンピュータについてお金と時間は用意されているんだけど、
どういう教育をするかという指針が決まっていない。
それもおかしいなあと思ったのも、きっかけです。
台湾や韓国のメディアアーティストにも参加してもらっているんですけど、
たとえば、台湾はコンピュータを教えるための国のガイドラインが決まっているらしいし、
韓国はインターネットを誰でも使えるように、端末を開放しようとしているんですよ。 
あと、僕らのときは「ないものは、作ったら良い」という考え方だった。
今は、色んなソフトがあって、それを使えればまあいいよね、ってなっている。
でも、本来はコンピュータには「拡張性」があって、
それを生かして、今までになかった色んなことができる可能性があるんだと、
教えたいんです。

──それってすごく大切なことですね。
  具体的には、どんなワークショップをしているのでしょう?

中学生・高校生向けは、Maxを実際に触ったりしていますよ。
小学生向けには、コンピュータの可能性を感じる学習です。
たとえば、エアコンの中にも、冷蔵庫の中にも、コンピュータが入っているんだよ、とか
センサーを付けて、プログラミングがあれば動くんだよ、とか。
その延長で、紙に描かれた○に色を塗って、コンピュータに取り込む。
その色にそれぞれの音を割り振って実際に出して、それを別のコンピュータに聴かせて、色を再生し、
色も音も同じように、コンピュータで扱えるんだよ、と知ってもらったりしています。

(「京都コンピュキッズ」の実際の光景) 

──何か発見は、ありますか?

ありますよ。
思うように動かないしね(笑)。
こっちが教えようと思っているのと、ぜんぜん違うほうに興味を示したり。
そこか!お前の面白いところは!って(一同笑)。
でもやっていて面白かったら、何度もやっていけば、覚えていくと思います。
今の小学生は本当に大変だと思います。
プログラミングは、とても大切なサバイバルツール。
あと、英語とかも、小学校でも、もっとちゃんと教えていったらいいと思います。

──最後に、今後の予定について教えてください。

来年にまた“true”の上海公演の可能性があります。
あと、今年の10月に横浜でライトアップの話があり、
たぶん、スマートグリッド系で、LED使って、省電力でやっていこうという動きになりそう。
そこでは通信系の技術を使いたいと思っています。
離れているところに長い距離を、リレー式に情報が伝わっていくようなものを、やってみたい。
いまやワイヤレスで、動画も簡単に通信できるのですから、
小さな送受信システムで、無線で、離れているところの照明を
制御できるのではないかと思います。
他には、太陽光などの発電システムによるバッテリーの軽量化にも興味がありますね。
あと、これも来年ですが、海外で新作パフォーマンスのレジデンスの可能性もあります。

──今やっていることを、もっと多くの人に伝えるための課題ってありますか?

たしかに、一回の公演を見てもらえる人の数は限られていますからね。
でも、LEDを使っていて面白いのは、あまりインフラがいらないことです。
「Refined Colors 」では、白い壁が一枚あればできるような公演とワークショップをしました。
もう少しすれば、インフラがあまりない場所でも、
デジタル系の複雑な表現ができるようになると思います。
ベトナム、タイ、ルーマニアなど、世界の各地を周る公演も、やりやすくなりました。
オープンでみんな共有できれば、どこでも、
「何か面白いものができるらしいから、やってみよう」というようになるのでは。
条件的には、そろっていると思います。

──今後、ますます、ご活躍の場所が広がりそうですね!
   今日は、ありがとうございました!

能のお話から、子供たちの未来のことまで、
幅広い内容について、お話をうかがえて、面白かったです。
照明のプログラミングや最新技術についてなど、少し難しい内容
もありましたが、
優しく丁寧にお話していただきました。ご自分の取り組みや興味のあることについて、
目をキラキラさせてお話しされる藤本さんが印象的でした。
これからの活動にも、大注目です!

(京都の町屋を改装した藤本さんのワークスペース。何気なく停めた自転車がいい味出してます!)

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