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2010
01.14

【アサダワタル(事編、ex大和川レコード)】日常を編集し続けるアーティスト

Author:運営事務局

Tags: アサダワタル(事編、ex大和川レコード)

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「KAKEHASHI」第21回のインタビューは、演奏の中に様々なメディアを盛り込み、一味違った独特のパフォーマンスやアートプロジェクトを展開するアーティストのアサダワタル(事編、ex大和川レコード)さん!!

 ドラマーとしても活躍中で、テレビCMや映画音楽での演奏もされているんですよ~。

今回は、アサダさんが活動のスローガンに掲げている「日常再編集」と言う言葉を中心に、メディアを使ったアートパフォーマンスや全員参加型のアートプロジェクトについてお聞きします!
またYouTube などに上げている映像を見せて頂きながら、“日常を編集する”とは一体どんな活動なのかを語っていただきました。



■編集するという行為。それを装置化するパフォーマンス。

──まず、どういったメディアアート活動をされているかお聞かせください。

表現の分野でのメインはプロジェクト全体の構築。展覧会とかCDなどの作品も作りますが、様々な分野の中に文化的装置を組み込んだプロジェクトも行います。チーフディレクターを務めるライブラリースペース「築港ARC(ちっこうアーク)」(主催:大阪市、企画運営:財団法人大阪城ホール、應典院寺町倶楽部)は、そういったイベントの情報発信の場として運営しています。ソロ活動だと基本、歌を歌うことが多くて、そこに映像・テキスト・美術的な要素を盛り込んだパフォーマンスをしてます。例えば編集済みの映像を膝に抱えたテレビモニターに映して、その場での演奏とシンクロさせるとか、テレビモニターの中の自分と生身の自分とが漫才みたいなパフォーマンスとか(笑) 今や液晶が主流ですけど当時はブラウン管で、ものすごく重たいんですよね(苦笑) 歌も色んな場所で録音した環境音や色んな人の話し声や歌声を同時に流したり、楽曲自体もAメロとかサビとかパーツ毎に全部分解して様々なメディアに任せます。ここはテレビ、ここはラジオ、ここはカセットテープ、ここは生身の自分、このパートは女の子の声・・・って感じに再編集するんです。一見バラバラですけど、全体でみると流れが出来あがってるという。

僕は自分の活動を“メディアアート”って言い方はせず、“メディアを扱ったアート”と言います。その場合のメディアはテクノロジー的な話というよりは、情報を伝える媒体としてのメディアですね。
例えばこれは極端な例ですが、年金問題が話題だった時のイベントではパフォーマンスの途中に真剣に年金話を語り合う場面を入れました。実はその時パフォーマンスを共作していた音楽家の米子匡司君のお母さんが社労士さんだったこともあって、彼女の話を情報発信のメディアにしました。先程の「ここのパート・・・」の考え方の延長にあるものです。これがまた結構ためになったんですよ。
最近ではメディアを分かりやすくパフォーマンスに取り込んでいた数年前から考えると、随分複雑な仕様になって来てまして、パフォーマンスの即興性も強化されてますね。

説明しないとお客さんが理解できなくなってます・・・(苦笑)
世に言うメディアアートからは遠いかもしれませんし。

──ではご自身の中で一番、メディアアートらしい活動はなんでしょう?

SJQ」の活動ですね。HEADZcubic musicからアルバムも出してます。東京でのライブが多くて、最近では早稲田大学の学祭でライブをしました。メンバーの魚住勇太君が作り上げた人工生命プログラムを盛り込んだ5人編成のサウンドプロジェクトです。ループを用いず、一つ一つの音と音をドミノのように連鎖反応させることで、音楽が生まれていくようなパフォーマンスをしてまして、演奏はコンピュータなどで、生演奏をリアルタイムで音響処理を行う、ライブエレクトロニクスという手法でやってます。人工生命プログラムのことをごく簡単に言うと、PCモニター内に速度や動き、音なんかを組み込んだ四角いオブジェを複数投入。
その中で大きいオブジェが小さいオブジェを食う、その時に生じる音が独特のリズムを生み出します。
その音が重なって、音楽になっていくんです。それをプロジェクターに映しながら、その前で僕らが演奏するスタイルです。5人+1(プログラム)というバンド構成で。
リハに凄い時間がかかるし、ライブも即興性が高いので凄く上手くいく時と、そうじゃない時がありますね(笑) 常にお互いがメンバーの動きを見て、音を出したりして。そこで一連のリズムが出来てきたら、魚住君が合図を出して音を固定するんです。解体するコードもあって、また合図出したら、一人ずつ演奏から抜けていく・・・なんと言うか、スポーツみたいなライブ。パフォーマンスとしては、構造的になっていく過程が一番の見せ場ですね。
これが自分の活動の中で一番メディアアートらしい活動かもしれませんね。

──頭での理解が少々難しいです・・・。他にメディア媒体を使ったアートと言うと?

水都大阪2009で、米子匡司君と共作した、「ジュンケイ(電話ボックスから始まる風景巡回計画)」かな。これは公衆電話を使って、色んな人に会話をしてもらうんです。僕らは別の基地局に居て、お客さんとの会話の中で「あなたの記憶の中の風景について質問させてください。どんな所で育ちましたか?」とかって質問をする。その間に会話に関係する映像とか画像をネットでひたすら調べて探し出しては、会場にあるモニターに映したり、電光掲示板にメッセージ流したり、プリンターから出力しまくる。お客さんは「なんで実家近くの風景が出てくんの?(笑)」ってビックリしてました。
プリントアウトされたものが溜まったらショッピングカートが中之島の会場をぐるりと周り、その辺にいるお客さんに、他人の記憶情報を読み上げてもらって、その様子を撮影しては会場で上映するという観客参加型のプロジェクトをしてました。

──不思議な体験が味わえるイベントですね!印象的な事はなんでしたか?

とにかく情報収集が追いつかない!あと電話レンタルの交渉は結構大変でしたね。NTT西日本さんの「何に使うんですか?」っていう疑いの目が(笑) だから実際に公衆電話機担当の方に来てもらいましたもん。参加者からは「なんかカウンセリングみたいやった」って言われましたね。
5~10分話すんですけど、話が盛り上がっちゃうと後ろに列が出来る程にもなってました。
これは、「人の記憶を参照してメディアを使い引用していく」という試みでしたね。



■メディアによる孤立ではなく、繋がりを。

──メディアが人を孤立させているという認識がお有りですか?

ありますね。メディアを通して情報を受け取る時って周りに誰かがいても対メディアとしては大方個人として受け取っている感覚があります。人とコミュニケーションをして情報を手に入れなアカンって時代から、一人でもメディアを通じてどんな情報でも手に入る時代になってきているし、メディアがあれば一人で遊べちゃう。でももしメディアを通じて人と人とが語り合える関係を作り出せたら… メディアに接する状態を色んな人と共有出来れば、メディアからの情報を鵜呑みにせず、疑って考えて知識を増やせる。マスメディアによってがっちりと編集された情報をもう一度自分達の手で再編集していけるんですよ。だから孤立じゃなくて、メディアを使って人が集まり繋がれる・みんなで楽しめる仕組みや場所を作りたいなぁって思ってます。
その試みがアートの分野であることに拘らないし、既存のアートよりもっとアトラクション的かもしれないですね。これを「メディアアート」やと捉えるのは自分じゃなくて周りの人なんですよ。

―何か具体的にメディアを共有するプロジェクトはありますか?

「KAMAN!- TV」ですね。これはトヨタ財団さんから助成を受け、NPO法人cocoroomのプロジェクトとしてディレクションしてます。大阪は西成区の商店街っていう、かなりディープな場所に地域交流センターである「カマン!メディアセンター」を作りました。ご存知のように西成は、「釜ヶ崎」とも呼ばれ、日雇い労働者や生活保護を受ける高齢者が大変多い街です。障害のある方も多く、生活困窮マイノリティが集まっている街なんです。でも、一方では、最近外国人バックパッカーがどんどん増えているんですよ。最寄りの駅である新今宮は関西空港から一本で来られるし、なんといっても安宿が多い!「ドヤ」ってやつです。恐い・ガラが悪いってイメージがあって若い子はなかなか立ち寄らないんですが、外国人にとっては、むしろ刺激的で面白がって来ている人もいますね。あと、商店街がいくつもある街なので、飲食店関係者も多いですね。こういった多様な人たちが行き来する人通りの多い商店街なので、「そういう色んな背景の人達が横に繋がって気軽に話せる場があればイイよね」という理由で交流センターを作ったんです。
 センターの入口の所に街頭テレビを設置して、歩いている人から丸見え状態にしてます。そこには昔の映像・・・例えば、大阪万博とか、大阪ゆかりの有名な事件のニュース、昭和の歌番組などを流すんです。
おっちゃん達の食い付きがもの凄く良くて「あったなー!こんなん」って。そしたら近所のお店の人も出てきて「ありましたね~」て会話が始まって盛り上がる(笑) そこにコミュニティが出来上がるんです。テレビ周りのオブジェも、たまたま近所に宿泊していたバックパッカーの兄ちゃんに「作ってや」って言ったら、作ってくれたんですよ。いつも来てくれるおっちゃん2人は、アル中だったけど仕事が見つかった事や周囲のサポートもあって、酒がようやく抜けて今は、とても良く手伝ってくれてます。

──とても面白いですね!その映像はどうやって作られているんですか?

「ありものを編集する」というスタンスを取っていて、映像は全てYouTubeから引っ張ってます。これらをPCにダウンロードし新たに編集すると著作権的に厳しいので、YouTube上で再生リストを組んでそのままを上映してます。もちろん非営利です。ウェブに上がっている映像が順番にブラウジングされて、その様子がそのまま大型モニターに映しだされているだけなんですよ。
毎日昼の12時から夜18時まで上映して、週ごとにリストを変更。リストはよく来てくれている近所のおっちゃん達に、話を聞いて組んでます。おかげで、だいぶ昭和の映像に詳しくなりましたね。

──なるほど。でも、なぜこういった映像がウェブ上に沢山あるんでしょう?

みんなに見て欲しい、みんなと共有したい!という気持ちでアップロードするんじゃないかな。全然金儲けとかは意識しないで。「dotSUB」っていうサイトがあるんですが、これは誰かがアップした映像に世界各国の人が字幕翻訳を付けるんですが、みんな基本的には自分の意思でやってるんですよね。
単に親切というレベルの話ではなく、表現をする事自体がオープンソース化してる。
「面白い事思いついたら、みんなで共有していきましょう」って。そうやって情報を編集してるんです。



■自分のプライベートから小さなパブリックを生み出す

──では、今後の活動について教えて下さい。

“概念の編集”的なつもりで進めているのがアサヒビール芸術文化財団さん等にご協力いただき行ってる「住み開きアートプロジェクト」です。これは、表現の場所としては全く意識してなかった、自宅とか個人事務所といった超プライベート空間に意識を向けてもらい、そこに新たなアイデアを盛り込んでいくといったもの。その自分のテリトリーを使って、なんか面白い事できるかも・・・と言うのに気付いてもらえたらなぁという気持ちでやってます。イベント主体のプロジェクトではないんですが、まず知ってもらう一つの手法として、実際に住み開きをしている人を訪ねる、お宅訪問イベントをこの夏に開催しました。今は大きく4つのプログラムで動いています。自宅に洞窟博物館を作った方や、部屋を古本屋にしている方など以前から「住み開き」をしている人の家をジャンルは問わずに紹介。更に、期間限定の「プチ住み開き」をやってくれそうなアーティストに声をかけて、「自分宅でライブやって!展覧会やって!」って(笑)
 今年は大阪でイベントと、あとは全国を回って報告と情報収集。
来年は幅を広げて八戸、宮城、東京など各地を回ってプロジェクトとして情報共有を行う予定です。
これまでの活動レポートは全てブログにアップしていて、来年初めにはとりあえず小冊子でも作ろうかと編集作業中です。長期的には活字メディアとしてしっかり書籍化したいなと思っています。

──その「住み開き」はやはり田舎の方が実行しやすいんでしょうか?

やり易いと言うよりも田舎の方では元々自然な形でされている方が多いですね。「住み開き」ってそういう「行為」のことというよりは、「捉え方」の問題だと考えているので、自分自身が「これは住み開きだ!」と思えばそうなんですよ。がっつり定義はしていませんから。そもそも「住み開き」を勝手に提唱しているのには、自分の仕事の背景がありまして。行政から仕事をいただくことが多い立場上、どうしても事業期限であったり、施設耐震構造の問題であったりで、なんだかんだと自分たちで手がけて成長させたスペースを手放さざるを得ないことが多いという問題意識があります。その不安定さがゆえに、次の展開に繋げるために闇雲に事業を詰め込みすぎるといったこともあり、持久力が落ちてくるんですね。そこで無理なく、自分の最も身近な場所から何か新しい動きを起こせたらと思いました。また、公共ホール的な場所だとどうしてもお客さんがいてゲストがいてっていう関係性やお互いの距離感を越えにくい。でも逆に、こじんまりした集まりなら、お客さん同士の横の繋がりも出来るし、コミュニティの作り方としても面白い。そういう自分で表現の場所を獲得していく意識を伝播させるためのまさしく「メディア」として考案したのが「住み開き」って言葉なんです。だから、変に言葉に拘り過ぎて本来の思いからズレないように気をつけてます。

──まさしく行為の定義としての言葉ですね。反響はどうですか?

今動いているプロジェクトの中で一番の反響です。アートプロジェクトと言うとアート方面からしか話が来なかったけど、これはアート以外の所からの反響が大きい。建築系、街づくり系、福祉業界・・・街に関わる色んな領域の反応があって、毎月各地巡業してます。アート以外の分野にも自然と繋がってゆける所が凄く面白いですね。もっと様々な分野の事例紹介もしていけたらと思います。ありとあらゆる越境を掛け合わせて、結果として良く分からない表現が生まれていくと言う(笑)

──最後に。「編集」という言葉が沢山出てきましたが、改めて「日常を再編集する」とは?

YouTubeやdotSUBなんかもそうで、世の中はみんなが情報を発信して、みんなで編集してるんですよ。面白い動画を見つけたらブログに貼って紹介したり。情報を共有して編集、また共有して再編集する・・・って感じに。今のはわかりやすい例ですが、例えば「住み開き」だって、元々既に存在している行為を知ってもらう為、気づいてもらう為に、言葉でその行為を再編集した結果です。
一度、自分の日常生活を「編集」という視点で捉え直してもらえれば嬉しいですね。そうすればもっと日常に近いところから新鮮な「表現」が生まれてくるのではないかと思っています。

──ありがとうございました!

取材中、「KAMAN!- TV」は世界的にも超ディープな交流センターだ!という見解になるほど
面白い取り組みで、ちょっと覗きに行きたくなりました。
私も日常の中で何かを編集しているんでしょうか・・・この取材記事がそうかもしれません!


取材@ 築港ARC

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