PICK UP

編集部のピックアップ記事用ブログ

2009
03.20

【小林茂】オープンソースのハードウェア「Gainer」の開発者

Author:運営事務局

Tags: 小林茂

Pin It Share on Tumblr
「KAKEHASHI」第14回目のインタビューは、IAMAS(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)准教授の小林茂先生。
 
小林先生は、「Gainer」というユーザー・インタフェースやメディア・インスタレーションのための環境を開発されたということで今注目を浴びている研究者の一人です。

「Gainer」は、大変なプログラムを組むことなしに手軽に作れていくということで注目されているハードウェア。
加速度センサ(加速度や傾きを測る)・振動センサ(どれくらい震えているかを測る)・タッチセンサ(どのくらいの力で触れているかを測る)・焦電センサ(人を感知する)などなど他にも色んな機能を備えていて、たとえば加速度センサを利用すればWiiリモコンのような傾きで操作するコントローラを作れたりするわけです!
 
小林先生はすごく丁寧な方で、難しいハードウェアのお話も分かりやすく説明してくださいました。先生の授業やゼミもきっとすごく分かりやすいです!「Gainer」の裏話や研究の興味深いお話を沢山聞かせていただきました。
 
 
 
■プロトタイプやアイデアを生み出すときの右腕「Gainer」
 
──「Gainer」は、「新しく作った環境」ということですが、具体的にはどういうところが新しいんでしょうか?
 
小林:うーん、「既存のものとはどう違うんですか」という質問をよくされるんですけど、既存のものとの差別性や新規性って僕はあんまり気にしていないというか、どうでもいいんです。「今までできなかったことが出来る」というよりも、使ってみたら「あ、他より使いやすい」て思ってもらえるようなもの、というところを重視して作ったので。機能としては既にあるものと同じです。「Gainer」は、最初にこういうことをしたいなと思った人が使いやすいように、使いやすい環境を考えてそれを実現したものなので、新しい技術や他のもので出来る技術を足したいなら、どんどん他のものを併用していけばいいと僕は思っているんです。「Gainer」で出来ることが作品の領域を決めてしまうのはあまりよくないと思っています。
 
──なるほど。領域を決めてしまう、というのはどういうことですか?
 
小林:「Gainer」には、「ここまでは出来るが、こっから先は難しい」という限界があると思ってます。「Gainer」で最後までやろうとする人もいますけど、僕は最初にアイデアを考えるときは「Gainer」を使ってもらって、それ以降は用途にあわせてほかのツールを使ってもらうというのがいいなと・・。「Gainer」は他と比べてどれくらいできる、というものではないんです。お互いに得意なところでフォーカスして作っていけるのがオープンソースのいいところですからね。
 
──開発者という事で、問い合わせって結構あったりします?
 
小林:ありますよ。「使ってみたけど、こういうことをするためにはどうしたらいいか」という問い合わせが結構あって。「Gainer」は、誰でも買えるし使えます。だんだん普及してきたみたいです。最初のほうは、使う部品を揃えるのとか、専門用語とかが難しいという問題もあったみたいですけど。
 
──部品を揃えるのが大変って、どういうことですか?
 
小林:部品専門店を何店舗も回らないと売っていなくて揃わないんですよ。今はスターターキットのようなものを考えて用意しているショップもあれば、解説サイトや解説書なんかも沢山ありますから、ずいぶんマシになったみたいですが。せっかく買った部品も使い方を間違えるとすぐに壊れてしまうこともあります。でも、そうして試行錯誤することで覚えることが多いと思うので、あえて何でも簡単にできるようにはしていないんです。
 
──なるほど。失敗は成功の母、ですね。
 
小林:そうそう。どこまで親切にするか、というのは開発のときかなり考えました。苦労しながら、たとえばどの部品がどんな値段でどんなものかを知るとか、試行錯誤して作っていくのはとても重要な要素だと思うんですよ。例えば、どんな種類のLEDでも繋げば自動でキレイに光るようにできないか、という要望に強く反対したことを覚えています。手を汚して苦労しなければ覚えられないところは、意図的に残しています。
プロトタイプやアイデアが生まれてくる部分をいかに活性化するか、を考えて「Gainer」を開発しましたが、今後はそれを使ってどう作品を作っていくか、というあたりの溝を埋めていければなと思っています。
 
 
 
■ハードウェアのシュミレーションを簡単にしたい
 
──ところで先生は、どうして「Gainer」を開発しようと思われたんですか?
 
小林:以前会社で働いていたとき、ソフトウェアはプロトタイプがササッと作れてわりととっつきやすいけど、ハードウェアはそれができないなぁと思っていたんです。たとえばLEDをつけるとかモーターをまわすとか、そういう一つ一つのことも、プログラムを書かないといけないじゃないですか。自分で経験した中で大変だったことを、もう少し簡単にできるように作ってみたのが「Gainer」なんです。それに、シュミレーションなんかにも便利に使えたらいいなと思って。
 
──シュミレーションですか?
 
小林:ソフトウェアなら、フォトショップなんかを使えばすぐにシュミレーションできますけど、ハードウェアはそうもいきませんから。ハードウェアでもそういうことを簡単にやりたいなと思ったんです。「Gainer」は、「ちょっとやってみる」、にも便利に使えるツールだと思いますよ。
 
──「Gainer」の開発をやってみて、新しい発見などはありましたか?
 
小林:「ひとつのモノが、こういうタイミングで世の中に広がっていくんだ」という発見がすごくありました。ソフトウェアの場合はダウンロードすればすぐに使えるので広まるのも簡単ですけど、ハードウェアは違いますよね。開発に当たっては、「みんなが手に入るようにしないと意味がない」という思いがすごくありました。
 
──どういうきっかけで広まっていったんですか?
 
小林:ICCで約1年間展示をさせてもらったのが大きかったですね。ICCがリニューアルオープンする1か月くらい前に連絡をもらって。ICCにたまたま何かを見に行ったメディアの人から広がって、ワークショップの募集がすぐに埋まったんですよね。チャンネルがあると広がるんだなって思いました。
 
──意外な広まり方というのは具体的にはどういう感じだったんですか?
 
小林:当初想定していた人々以外に、情報系のところまでにも広まったのは驚きましたね。名の通ってる大学でも使われていたりして、なんで?って思いました(笑)。外部のツールを使ったりするんだ、っていうのが不思議に思いましたね。
 
 
 
■チームでものづくりに携わりながら、新しい開発を行いたい
 
──先生の今後の活動としては、どういうことをやっていきたいと思われてますか?
 
小林:僕は自分自身で何もかもやり遂げるという作家性はないけれど、チームを組んで開発をしていく中で得るものはすごく多いので、今後もそういうふうに活動していきたいですね。いろんな人と一緒にやっていくということに興味があります。僕が表に出てやっていくということはたぶん今後もないと思いますし、そもそも、開発の環境自体が重要視されるのはおかしいと思うんですよ。
 
──えっ、どういうことですか?
 
小林:アートやインスタレーションの作品は、作品自体を見るべきですから。技術に興味があれば別ですが、何で作っているかを重要視するのは本来の見方ではないですよね。
 
──確かに、それはそうですね。でも作家や技術者の方は、そういうところはどうしても見てしまいますもんね。
 
小林:僕もその一人です(笑)。それと、興味のあることでもうひとつ、オープンソースのハードウェアというテーマがあります。
 
──ハードウェアの新しい形ですね。
 
小林:ハードウェアをオープンソースで展開するということ自体にさまざまな可能性を感じています。自由に改変していいですよ、とオープンソースで出してから1年くらいは特に動きは無かったんですよ。でもアメリカである会議に参加したとき、プロトタイプにすごく注目しているCEOの方と知り合って。で、「面白そうだからアメリカでも販売してみようかな」という話になって、とりあえずサンプルを渡しておいたら、2か月後くらいに改変仕様の確認の連絡が来てアメリカで販売されるようになったんですよ。
 
──ええっ!すごいですね!
 
小林:早いですよね(笑)しかも、今度はそれでアメリカから逆輸入する人が出てきたり、それで今度はそれをもとにまた改変して売り出す人が出てきりして。どんどん今は「もとはこうだったんだけど自分はこう改変しました」みたいな感じで販売される流れも出てきて、面白いなと思っているんですよ。改変されたものをもとにまた別のものが、もう自費出版くらいの手軽な感覚で出てきたりしているので。でも、初めて買う人がどれがオリジナルなのか分からなくなってしまうという面もあるでしょうし、同じようなものがいくつもできてしまうという問題点もあるので、一概に良いこととは言えないかもしれないんですけど。スピード感はすごく早くて、今っぽいですよね(笑)権利関係も含めて、今後の動向に着目したいです。
 
──なるほど、先生の今後の活動が楽しみです!ありがとうございました。
 
 
 
とても分かりやすく説明していただいて、最初は用語がさっぱりわからない・・・と不安になっていた私たち編集部も、すごく楽しい取材の時間を過ごせました!
 
他の作家さんとのコラボ活動についても、「コラボしましょう、という話からコラボをするのは違う気がするなぁと思っています。うまい題材があって、双方がやりたい、となれば僕はもちろんやりたいですね。」と積極的な姿勢を見せてくださっていて、「KAKEHASHI」がツールやキットを制作していく強い刺激になればいいなと思いました。
 
TRACK BACK
http://kakehashi.tv/creator/action.php?action=plugin&name=TrackBack&tb_id=147

KAKEHASHI 運営事務局

〒530-8263
大阪市北区中之島2-2-7 中之島セントラルタワー
株式会社大広 大阪本社内
KAKEHASHIプロジェクト

Tel:06-7174-8030
Fax:06-6202-8548
Email:kakehashi@daiko.co.jp