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2019
01.21

【原倫太郎】デジタルとアナログの境界を拡張するアーティスト

Author:運営事務局

Tags: 原倫太郎

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「KAKEHASHI」第29回のインタビューは、アーティストの原倫太郎さんです。

 
原さんはこれまで「変換」をキーワードに、デジタルな要素をアナログ的手法で表現した立体作品やインスタレーションを中心とした作品を制作されています。



近年では、越後妻有や北アルプス芸術祭などでも作品を発表。
また独特なアプローチの絵本も手掛けられています。
 
海外の方からは「催眠的」と表現されたことがあるという原さんの作品。
今回は、横浜で展示中の作品を体験しながら、お話を伺ってきました。


 
ずっと眺めていたくなる、子供のころの原体験をアートに

──まずは、展示作品について。コンセプトを教えてください。

この作品は、2014年に試作品を制作して以降、この4年間、日本だけじゃなくフィランドやアイスランド、アメリカでも展示を行ってきました。今回は、ブラックライトを設置し、レールを転がるボールが発光して、暗闇に浮遊したり、上昇しているように見えます。
(展示作品)『上昇と下降 – リフレクション-』
 
コンセプトとして、子供のころの原体験が根底にあります。例えば、木のレールの上をボールが転がるおもちゃや、科学館の(ピタゴラスイッチ的な)展示が好きで、眺めていたような体験。特にボールが頭の中にあって、それをアート化したんです。その際に、科学館の展示のようなヘビーなものじゃなくて、もっと浮遊感があるものを作れないかと思ってこの作品に至りました。

※映像は、2018年フィンランドでの展示のもの
 
『上昇と下降』というタイトルは、だまし絵の奇才・エッシャーの作品から拝借しています。エッシャーの無限回廊のような世界をインスタレーションで表したかったんです。透明の糸のレールはすべて計算された角度で傾いていて、ボールは重力に従って自然に転がっているんですが、見る角度によって上昇しているようにも見えるんです。

──最初見たときは、電動で転がっているのかと思いました…。

実はボールはコントロールが難しくて、静電気や寒さ、乾きに繊細に影響されてしまうのですが、そういったことを加味しながら調整しています。転がるスピードも、速すぎず遅すぎない「理にかなったスピード」みたいなものが、心地よく感じられればと思っていて。詳しいことは分からないけど、そういう物理と人間の関係性みたいなものはあるんじゃないかと思って作っています。
 
映像の世界を立体に変換する

──今回の展示に限らず、作品づくりのベースになる思想は?

こだわっているのは、やはり原体験。自分は映画が好きなので、常に映像的なインスタレーションを考えています。
例えば、シャボン玉を用いた『プロジェクション・ウォール』という作品では、シャボン玉のフレームをスクリーンに見立てています。平面のスクリーンが膨らんで立体になって、形が変わって光も変わっていく。平面だったものが、有機的なかたちになり、映像の世界を立体に変換しているんです。なので、記録動画でも作品の雰囲気はある程度伝わると思うんだけれども、自分の作品はやっぱり立体で感じてもらうことに意味があると思っていて、シャボン玉を生成するための湿度や洗剤のにおいとか、その場でしか感じられないものを含めての体験だと思うんです。

(作品名)プロジェクション・ウォール
 
そういう環境の制約も、作品にとっては重要で、自分は自由にやってくれと言われると逆に難しいので、制約の中でやることが好きなんです。海外で自分の作品を「hypnotic」と表現されたことがあって、催眠的とかそういう意味なんだけれど、境界があいまいになるような、デジタルとアナログの真ん中のような、そのどちらも見られるような、境界を拡張させても、境界を設けても成り立つものになっているのかもしれないです。

相反するものを共存させることで、気づきを感じてほしい

──作品を通して、伝えたいことは?

アートの文脈を感じてほしいです。エンターテイメントではないし、ボールの動きに意味はないけど、意味がないことに意味があるというか。サイエンスもエンターテイメントもエッセンスとしては入っているけれど、ただの空間演出で終わらせたくない、装飾ではないという思いがあります。この作品があることによって、「ここがどういう空間なのか?」を感じてほしい。見る角度によって見え方が違うことだったり、空間的・時間的な体験とか、気づきとか、絶対に何かあると思うので。あと、「もう一つの世界を見つける」ことは大切にしています。鏡を使って世界の裏側を表現したり、常に相反するものをひとつの世界に共存させているんです。

自動翻訳を介した絵本作品

──絵本の作品についても伺ってもいいですか。

はい。これは誰もが知っている日本昔話を、インターネット上の自動翻訳サービスを15種類くらい使って、「日本語」から「英語」に翻訳し、またそれを「日本語」に再翻訳して作る絵本です。翻訳サービスによって少しずつ表現が違うんですが、面白いところを選び抜き、組み合わせて作っています。例えば、一寸法師だと「A little,low menter」と英訳され、それを再翻訳すると「少量法律助言者」となるんです。
 
──
面白い!(笑)

何となく意味はわかるんですけど、わからないようなところもあったりしますよね。その文章に合わせて、相方(画家・原游さん)が小ネタのきいたイラストを描いていきます。これまでに『匂いをかがれるかぐや姫』と『背面ストライプの浦島太郎』の2冊を出版していますが、今回、新作として「おむすびころりん」にトライしました。
おなじみのフレーズである「おむすびころりん すっとんとん!」を英語に自動翻訳すると「Runaway riceball Sutto Thun!」になり、日本語に再翻訳すると「逃亡者ライスボール スットートゥーン!」になります。なので、タイトルは『逃亡者おむすびころりん』です。
 
これも、アナログとデジタルの変換ですね。アナログな文章を一度コンピューターに入れて、絵本というすごく古いメディアに書き出しているわけです。

──デジタルとアナログを行き来した後のどちらかだけでなく、作品を通してどちらの要素も感じるのが面白いですよね。原さんのおっしゃる「相反する」というキーワードを作品から感じます。

できれば、もっと見えないところでデジタルなどの技術も取り入れていきたいと思ってはいます。90年代からメディアアートにデジタルが取り入れられ、参加型でエンターテイメント要素の強いものが増えてきています。でも自分は、もっとアートの文脈を感じてもらえるような、そういった大規模なメディアアートでは出来ないことをやっていきたいですね。
 
──原始的な手法でありながら、アナログとデジタルの間にいるような感覚に陥る原さんの作品。進化し続けるメディアアートがこれから十数年、さらなる変化を遂げていく中で、人々にどのような感覚を与える存在になるのか、楽しみになりました。ありがとうございました!

取材@横浜・象の鼻テラス
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