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2013
10.16

【SjQ++】生演奏とコンピュータを組み合わせ、新しい即興音楽を生み出すバンド

Author:運営事務局

Tags: SjQ++

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「KAKEHASHI」第27回のインタビューは、SjQ++の皆さん。

魚住勇太さん(ピアノ)、米子匡司さん(トロンボーン)、ナカガイトイサオさん(ギター)、アサダワタルさん(ドラム)、大谷シュウヘイさん(ベース)と人工生命によるプロジェクト『SjQ』に、2012年4月よりKezzardrixの神田竜さん(映像)が加わり、オーディオ・ビジュアル・プロジェクト『SjQ++』として活動していらっしゃいます。


今回、オーストリア・リンツの国際的なメディア芸術賞プリ・アルスエレクトロニカにて優秀賞を受賞されたということで、ライブの後、お話を聞かせていただきました!


■ループを用いず、音の連鎖反応で展開する音楽

──プロジェクトリーダーの魚住さん(写真左)にお伺いします。まずはSjQについて、成り立ちや活動内容を教えてください。

SjQの音楽はちょっと特殊で、今のほとんどのポップ・ミュージックには、ループした音の素材が使われていますが、僕らはループを用いず、一つ一つの音と音をドミノのように連鎖反応させることで音楽を作っていきます。演奏は、コンピューターなどを使って生演奏をリアルタイムで音響処理するライブエレクトロニクスという手法で行っているんです。
SjQという活動自体は10年以上になりますね。最初はピアノの僕とトロンボーンの米子君の2人だけでした。その時は、用意した曲に対して事前に音を入れるということが多かったのですが、生でやるためにメンバーを増やして、ドラムのアサダ君とギターのナカガイト君と4人でやり始めました。それが2003年くらいです。って、こんな感じで長くしゃべってていいんですか?

──全然大丈夫です。それからそれから?

当時はカットアップという手法で、色々な演奏をあらかじめ一通り録って、それを切り貼りして作品を作るというのをメインでやっていました。でも、カットアップという作業自体はコンピューターを使って家でやるのが基本なので、ライブの時にそれを再生しながら演奏するのではただのカラオケじゃないか?と。もっと面白くならないのかな、みたいな話をしていました。
そんな時、少し大きなライブの前に、アサダ君が怪我をして抜けてしまったんです。ライブを断るわけにいかないので、残ったメンバーだけで即興でやろうとしました。やはり、カラオケはあまり使いたくなかったので。そこで、アサダ君が戻ってくることを前提に、新しいルールを作ったんです。
ちょうどその時に、僕は大学でマルチエージェントシステムという人工知能を使った電子音楽の研究をしていました。プログラムは木でいうと幹みたいな一番偉いやつがいて、それが順番に命令して駆動しています。指揮者が楽団を演奏させるみたいに、全部が全部、上の階層からの指示で動いているような仕組みなんです。ところが、マルチエージェントの場合は少し違います。自分で勝手に動く小さいプログラムがいくつか走っていて、それらがやり取りすることで機能するんです。それぞれが個別にルールを持っていて、それらの反応で動きが変わるんですね。そのルールを使って、音楽が生まれてくるというソフトを作ろうとしていたんですよ。それを演奏者に対して使ったらどうか、と思って。
それで、コミュニケーションしながら練習してみたら、結構上手く行きました。これは使える、と思いましたね。それまでカットアップというものは「自分たちが録ったものをコンピューターで切り貼りして再生するもの」だったのが、カットアップという概念を演奏者が持って、僕らがテープの代わりを演じるんです。カットアップはまずどこを切るかということが問題で、その次にそれをどう配置するかという構造の問題があります。普通は、その構造をパソコン側のソフトを使って配置していくわけですが、それだとパフォーマンスはできない。そこをルールベースでやり取りし、その中でコードとかグルーヴが出てくるようにできないかなと思いました。ある種、人力カットアップミュージックみたいなものを志したんです。
ループを使った音楽はよくあるので、僕らはルールベースでループによらない音楽を作ろうと思いました。ただ、ループ的な要素を完全に排除してしまうと、秩序が生まれない、つまり音楽に聞こえないんです。じゃあどうするのかというと、ルールベースで演奏する時にループをできるだけ形成するように設定します。全員が意志を持って、ルールの中で勝手にやり取りするので、頑張ってループを作ろうとしてもループには絶対になりません。それを逆手にとって、ループになりきらない、ループとカオスの間ぐらいを音楽として出すのをやっていました。
ある時、アサダ君が1~2年ほど個人活動のため休んでいた時期があったんですけど、その頃にはベースの大谷君も入っていたし、一応僕らはマルチエージェントで演奏者ひとりひとりが音楽全体を生み出す要素を持っている形でやっていたので、ドラムの機能を全部バラバラにして残すことを試みました。それぞれがドラムの代わりの音を出せるようにしておいたんです。これも、ルールがあるからできました。

──自分の楽器をやりながら、ドラムをバラバラにしてみんなでやっているという状態ですか。
そんなことができるなんて、何だか面白いです!


面白かったですね。アサダ君が粉々になってそれぞれの一部にいる、みたいな。でもわかりやすいリズムが出てこないので、お客さんに聴かせるには大変な2年間でした。鍛えられた時代です。2008年末にドラムとしてアサダ君が戻ってきた頃には、そういう独特の感じが確立されていて、新しいグルーヴが完全にできていました。今もそのルールは続いていますし、常にベースにあります。

──メンバーが変わったりしていますけど、そこから現在までにコンセプトが変わったということはあるんですか?

1回1回のライブごとに準備をするので、前と全く同じテンポでやるということはありません。そういう意味では、コンセプトは毎回変わっています。ただ、2009年からこの基本メンバーは固定されていますね。


音と映像のコラボレーションで生まれた『SjQ++』

──
そこに2012年からまた新たなメンバーが加わって、『SjQ++』となるわけですが、映像の神田さん(Kezzardrix名義で多方面で活動するアーティスト)との出会いはどんなものだったのでしょうか。


京都映像芸術祭の関連イベントで行われた、音と映像のコラボレーションがきっかけです。
最初に組んでくださいと言われた時は、正直困りました。僕らの音楽はリズムが一定じゃないので、作り置きの映像だとあからさまに「作ったのを合わせた」というのがバレバレになってしまうんですよ。そんな簡単に僕らの音に映像を付けられるものだったらとっくに付けている、と思いました。
でも神田君は違ったんです。
普通のVJなら家で作りこんできた映像を組み合わせますが、神田君はプログラムを使って映像を作っているので、その場で音に反応して映像が変わったり、自分でパラメーターをいじることによって映像を変えるということが可能なんです。SjQの各楽器をマイクで録って、その音量をコンピューターに無線で送って、解析して映像にするということをしています。映像を身体にかぶせて打ちたいという話が打ち合わせで出て、例えばピアノを弾くとピアニストが光るとか、ギターを弾くとギタリストが光るというようなことができたら面白いねと話して、今のかたちを作りました。
月並みな言葉ですが、僕らのインタラクションは「何か押しました、何か出ました」じゃなくて、それがもう一度フィードバックとして返ってくることを考えています。そこには時間のずれも生じます。常に状態がダイナミックに変わっている中で、1回出た信号が返ってくる。それをまた加工して出す……そうやってやり取りしていると、段々パターンみたいなものが出てきたり、グルーヴが出てくるというのを、苦労しながらずっとやってきています。神田君が加わってくれるなら、映像をただ使うんじゃなくて、そこにも入ってもらわないと意味がなかったんです。
例えば楽器を弾くとその人の頭の上に文字が飛んできて、別の人が弾くと文字が別の人に飛んで行くというようなことがあった時に、それを打ち返すということでグルーヴが生まれたりするとお客さんから見ていてもかわかり易いし、演奏者側から見ても「映像でできたグルーヴ」という理解でそれに応じた演奏ができるようになっています。

──神田さんの映像でSjQの音楽が可視化されたということですね。

誰と反応したらいいかとか、刺激されますよね。僕が弾いたときに、音に反応した映像が物理的にベースの大谷君のところに飛んでいく。彼はそれを打ち返そうと反応する。映像はそこの飛び方をコントロールできるので、神田君は映像をコントロールするのと同時にベースの反応もコントロールしているわけです。その飛び方に応じて僕らも演奏を変えるんで、演奏が変われば神田君の映像もまたテイストを変えるんです。

 


■プリ・アルスエレクトロニカの受賞と今後の活動

──
プリ・アルスエレクトロニカでの優秀賞受賞、改めておめでとうございます!どういったところが受賞につながったと考えられていますか?


僕たちの一番のオリジナリティは、シークエンサーを使っていないということだと思うんです。最初に構成された順番で音が出てくるわけではないし、映像が構成された状態で出てくるわけではありません。他のバンドのパフォーマンスは、最初にある程度曲と映像が決め打ちされていますが、僕らは音も映像も両方完全に即興。映像は音に対して反応するし、音の影響を受けて映像も変化する。その映像の動き方を見てまた音が変化して、その音を聞いてまた映像が変化して……と螺旋状にフィードバックを起こしていきます。かつ、生楽器と映像のオーディオビジュアルパフォーマンスという、挑戦を続けています。それが認められたんじゃないでしょうか。他のバンドの作品も大好きなんで、そこと方法論がかぶったら失礼だし嫌なので、違うことをやろうというのは強くありましたね。

──今後の活動について、最後にお願いします。

アルスで受賞することが目標だったわけではないですし、これを目指してというようなものはないんですが、自分たちが意図してクリアすべきことをクリアするということを繰り返してきているので、その中でまた新たなチャレンジができる場所を提供してもらって、それに挑戦していきたいと思っています。例えばSjQの映像ひとつとっても、スクリーン上の映像と演奏者がかぶるように設計しなきゃいけないとか、毎回の会場等の制約をどうやってプラスにしていくかとか、最適化するための試行をずっとやってきているんですけど、これがすごく難しいんですよ。毎回の環境に適応しようとしているだけで、僕らはそういう意味では、エージェント的なんです。レコード大賞を取ろうみたいな気持ちはあまりないですからね(笑)
チャレンジと言うとちょっとカッコいいけれど、逸脱したことをやろうとするのは大変です。
技術的にも音楽的にも解決しないといけないことがいっぱいあって、それをどうやってクリアしていこうかということが当面の課題です。

──ありがとうございました!

取材の前に拝見したライブでも、既存の音楽の型にとらわれず、音と音が響き合う空間に不思議な心地がしました。お話を聞いていると、意図して「意図しないもの」を作り上げることの難しさと面白さが伝わってきて、SjQ++さんの作品の深みにもっと触れたくなります。これからの活動、とても楽しみです!

もうすぐライブも開催されますので、
是非、チェックしてみてくださいね。

■あいちトリエンナーレ2013
10/19(土)19:30 映像プログラム『arc』(屋外ライブパフォーマンス)
会場:名鉄協商パーキング長者町第3
http://aichitriennale.jp/artist/sjq.html

■night cruising 7th anniversary
11/10(日) 会場:京都メトロ
http://www.nightcruising.jp/


取材@神宮丸太町駅 cafe & gallery etw
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